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ゴン太物語
著者:千賀 孝
提 供
潟Zンガコンサルタント
株式会社 センガコンサルタント

8ゴン太の予防注射

当然のことながら犬を飼うに当たってはそれなりのルールがある。
その一つが狂犬病の予防注射である。
かつては、野良犬が町の中を横行し、いかにも悪そうな犬が人を傷つけ狂犬病を伝染させたものである。
近年には、犬を飼う人もよく注意をするようになり、狂犬病そのものも、ほとんど聞かなくなっているが時折その疑いに関するニュースなどに接するとやはり、よく注意がいるものと改めて思う。

毎年のこととはいえ、人間にとっても注射とは嫌なものであるから犬にとっても嫌なことに変わりはないと思う。
ところが、わが家のゴン太は先生に懐いたのかあまり嫌がらない。
その先生もよくかわいがってくれるようなことが、以心伝心で分かっているように見えるのだ。
いつも、いいアイヌ犬だといって抱き上げてもらうことにゴン太も喜びを感じていたのだろう。
頭は大きく、耳は小さめだがピンと立ち、短めの足は太く、尾っぽはくるりと巻いて全身は茶色の毛であるが巻いたところだけが白い毛である。
外見だけでもすぐに見分けがつくが、さらにアイヌ犬の特徴は舌にあらわれる。
日本人の特徴のひとつに蒙古斑があるように。舌に大きな青い痣のようなものがある。
これがアイヌ犬としての大きな特徴なのである。

ゴン太は先生に抱かれていいアイヌ犬だといわれ、大きな舌を思いっきり出し、喜びをあらわしている。
したがって、犬のみならず我々もいつ注射をしたのか分からないうちにおわってしまうのであった。


9ゴン太が空を飛ぶ

近年になって、ペットの権利のようなものが認められるようになり、どこへでも犬や猫を連れて旅をすることができるようになった。
一昔前まではペットを連れて旅をする事なんかは考えられなかった。
荷物として扱われていたのである。確かに、最近はペットの訓練も行き届いて、他人に迷惑をかけないように育てられており、携行しても問題を起こすようなことは少なくなっていることであろう。
一度経験したことであるが、新幹線のある駅から大きなスーツケースに加え手に余るほどの荷物を持って乗ってきた人がいた。
丁度私の横が一つ空いていたので、ここなのかなと思っていたら、案の定この席であった。
すでにほぼ満員であったため、スーツケースは網棚にのったもののあとの荷物は自分の席の前に置かざるを得ない。
なんとその荷物の一つが犬のキャリィバッグであった。大変な人が私のよこにお座りなさったものと驚いていたが、席に着くや否や犬をバッグから出し、おまけに自分の弁当を使いだした。
荷物の量もすごいのにさらに犬と一緒に弁当とは驚いた。あまりの大変さに、思わず犬を私が引き取ってその人に弁当を食べてもらった。
犬の種類を私は知らないが大人しい犬で私の膝で静かにしている。
なるほどこのような犬であるから、簡単に持ち歩きができるのだなと感心し不思議な納得をしたものである。

ゴン太の場合はこんなことはまず無理だ。
20キロ超えた犬であり、当然貨物扱いとなる。
貨物にするにしても、まず、運搬用の籠を購入しなければならない。
結構大きな籠で一人で持つには少々むりがあった。そして、貨物であるから貨物の部屋に入れられるわけであるから暖房なんかがあるわけがなく、毛布やなにかと寒さ対策も必要であった。
尤もアイヌ犬であるから寒さには強いとはいえ籠に入れられ暗闇の中で耐え忍ぶことを考えると飼い主としては相当不安になる。
配送掛の人は大丈夫ですよと安心させてくれるものの初めてのときは新しい住まいでゴン太に会うまでは心配をしたものだ。

また、この籠にゴン太が素直に入るのかどうか心配していたが意外と簡単に籠の中に入って行った。
籠の中には常日頃ゴン太が愛用しているいろいろな物を入れて置いてはやったが、それまでの引っ越し準備やなにやかやと家じゅうの大騒ぎにゴン太もなにがしかの異変に気が付いていたのであろう。
妻がゴン太にこんこんと「暫くの辛抱だからだね」と言い聞かせていたのを、おとなしく聞いていたところをみるとよく理解していたのかもしれない。
夕方、先に我々が着いていた新しい住まいにゴン太が運ばれてくると、それこそ犬と人間の感動的な出会いがあったことをこと細かく書く必要はなかろう。
なにしろ、無事で元気な様子にホットしたことは確かである。
しかし、意外だったのは籠にいれておいてやった食べ物にはあまり手をつけなかったのだ。
おそらく、犬なりの緊張感から食い物どころではなかったのだろう。
このような経験は犬と人間の信頼関係をさらに増すことになることは間違いない。

その後、ゴン太は2回も空を飛ぶことになったが、なれたものか、何の問題もなく極めて素直に籠に入り旅を楽しんだ。
しかし、再開の度にえもいわれぬ喜びはその都度新鮮さを減ずることはなかった。

【ゴン太物語】1話〜7話
【ゴン太物語】10話〜18話

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